●研修テーマ
認知症研修(認知症について学ぶ)
●目的
認知症について学び、ご利用者様ご本人やご家族の方に症状がある場合の支援現場での対応に役立てる
●内容
◎認知症とは
一度習得した知的機能が後天的な病や事故により継続的に低下した状態で、日常生活をひとりでは送れなくなった状態の
ことを言う。なお、「認知症」とは症状や状態を表す言葉で、病名ではなく老化による「もの忘れ」とは異なる。
◎認知症の種類
【アルツハイマー型】
・脳内にアミタンパクが蓄積される。変性症疾患で脳全体が委縮し、アルツハイマーと診断されて亡くなった人の
脳重量は700gほどになる(健康成人は1200g~1500g)
・最大の危険因子は「老化」で、85歳を過ぎてくると4人に1人と身近なものになる
・取り繕うのが上手く、過去(出来ていた頃)の記憶でものを言うので課題が見えにくい
【血管性認知症】
・脳梗塞、脳溢血、脳卒中など脳内の一部の細胞に障害が発生するもので、記憶を司る「海馬」が障害を受けると
もの忘れを起こす。
・高血圧、糖尿病、生活習慣病を患っている人は要注意。予防は生活習慣の改善
・進行は滑り台をゆっくり降りるようで、一部が障害を受けることから良い時と悪い時があり「まだら認知症」と
呼ばれている
【レビー小体型認知症】
・脳全体にレビー小体が蓄積し発症する。中脳にレビー小体が溜まったものがパーキンソン病で、
レビー小体型認知症は、パーキンソン症候群と似た症状が現れる
・幻覚、幻聴の症状があり、叫んだり手や足が出たりすることもある。また、状態の良い時と悪い時の波が頻繁で、
日内変動が顕著にある
【前頭側頭聖認知症】(以前はピック病と呼ばれていたもの)
・反社会的行動を取りがち。思い立ったら譲らない
・常同行動、常同食行動、常同周遊がみられる
・時刻表的スケジュールで生活をする。また、感情が読み難くなる(感情鈍磨)
◎認知症の中核症状
【記憶障害】
「体験したこと」そのものが抜け落ちる。(記憶にないものは「なかったもの」と同じ)
【見当識障害(時問⇒場所⇒人物)】
私達は色々な器官を駆使して無意識のうちに見当をつけながら生活をしているが、その「見当」がつけられなく
なった状態
【実行機能障害】私達は日常生活をおくる時、自然と計画的に組み立てながら行っているが、その「実行機能」に
障害が生じた状態
【失認】視力に問題はないが、目に見えているものが正しく判断できない状態
【失行】運動機能に問題はないが、正しく行動することができない状態
【失語】言語機能に問題はないが、正しく言葉を理解できない状態
【社会脳の障害】社会生活を営むために必要な協調性や判断力、また反杜会的行動をとらないため制御する機能が
障害を起こす状態
◎前頭葉(前頭前野)の働き
前頭葉は以下にあげる、「人格・社会性・言語」と言った「社会脳」をつかさどるもの。
・思考する ・行動を抑制する ・コミュニケーション(対話)する ・意思を決定する
・情動(感情)を制御する ・記憶をコントロールする ・意識、注意を集中・分散する
◎中核症状と日常生活の困難さ
【記憶障害と日常生活の困難さ】
私たちにとっては記憶に残ることでも、認知症の人にとって記憶に残らないことは、なかったこと
(体験しなかったもの)と同じ。
【見当識障害と日常生活の困難さ】
・時間の見当識障害 → 夜中でも外出しようとする
・場所の見当識障害 → 今、自分のいるところが分からなくなる
・物の見当識障害 → 物の使い方が分からなくなる
・人物の見当識障害 → ずっと一緒に暮らしてきた家族が分からなくなる
【実行機能障害と日常生活の困難さ】
「実行機能障害」とは、一連の動作が分かららくなり物事を順序立て出来なくなること
分からないだけなのに「出来ない」と思われ、出来ることが奪われてしまう
【思考力や判断力の障害と日常生活の困難さ】
物事を判断することが難しくなる中で、昔の記憶と目の前で起こっている出来事で迷い混乱してしまう
何も考えられない人と捉えられやすく、周りから正確な情報を得る機会を奪われてしまう
◎認知症高齢者の隠れた気持ちを知る
・不安感 → 困りごとに直面した時の判断が出来ない。断片的に記憶が欠如するために時間の流れが掴めない
漠然とした不安が継続
・不快感 → 思い出せないことでイライラ感が不快に。漠然とした不快感が継続しストレスを感じる
・身体不調 → 便秘、食欲不振、発熱、持病の再発、不眠などがあってもはっきりと分からない
適切に処理できない
・混乱 → 諸認知機能の低下で今まで出来ていたことが出来なくなり、混乱し言動にも影響が出る
・被害感 → 記憶の欠落が原因で勘違いや思い違いが増強する。自分は悪くないと思うので
「誰かが陥れようとしている」と疑心暗鬼になる
・抑うつ → 失敗を指摘されることが続くと意欲低下、自発性の低下につながる
◎認知症基本法
2024年1月1日に施行された「認知症基本法」。そのキーワードは「新しい認知症観」
認知症になったら何もできなくなるのではなく、認知症になってからも、一人一人が個人としてできること
・やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間等とつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることが
できるという考え方
◎これから意識すべきこと(自分も周りも物忘れが気になり始めたら…)
・「なんか忘れっぽくなってきたから、ちょっと検査に行ってくる」と軽く言える社会
・「物忘れが出てきたなら、フォローよろしく」と軽く言える社会
・歳をとれば、誰もが認知機能低下することを理解する
・苦手なことが出てさた時の工夫を考える(その時に備える)
・記憶障害があっても、日常生活ができることを理解する
・認知症は生活障害であることを理解する
◆まとめ・研修結果
認知症の種類・症状を理解することができた。認知症基本法いある「新しい認知症観」にもとづいて認知症への向き合い方を
改めて考え直し、ご利用者様の支援に活かしていきたい。