社内研修報告

令和7年9月 社内研修報告

●研修テーマ

訪問介護の接遇マナーについて

●目的

介護現場における接遇マナーの目的や重要性、ヘルパーが身につけておくべき接遇マナーの基本を押さえる

●内容

◎接遇とは

  接遇とは、「相手を思いやり」「おもてなしの心をもって応対する」ことを指す

  単に顧客に対応して必要最低限のサービスを提供する「接客」とは異なる意味を持ち、相手に不快感を与えない

  表情や言葉遣い、立ち居振る舞いなどの接遇マナーを身につけておくことが必要となる。

  ヘルパーは淡々と事務的な対応をするのではなく、ご利用者様の状況や気持ちを汲みとる真摯な姿勢が必要となる。

  接遇マナーは一朝一タで身につくものではなく、形だけ取り繕ってもこちらの誠意は決して相手に伝わらない。

  接遇マナーを身につけるためには、常日頃から意識し相手や場所を問わず実践することが大切で、それによって

  必要な場面で自然と接遇マナーができるようになる。

 ◎ご利用者様との信頼関係構築の土台となる接遇マナー

  ヘルパーに接遇マナーが必要な理由は、接遇マナーがご利用者様やご家族との信頼関係を築くための土台となるもの

  だからで、信頼関係を構築することはご利用者様にとってより良いサービスの提供につながる。

  接遇マナーとはこちらの誠意を表現したものであり、その誠意が相手に伝わらなければ信頼は得られない。

  適切な介護技術・知識に加えご利用者様に「目を配り」「気を配り」「心を配る」、そのような接遇マナーを身につける

  ことで初めて一人前のヘルパーと言える。

◎訪問介護の接遇マナー9つの基本

  訪問介護サービスを提供するにあたって、ヘルパーが身につけておくべき接遇マナーには以下の9つがある。

  ①あいさつ

   あいさつはコミュニケーションの入口で、「大きな声で明るくはっきり」 が基本となる。

  あいさつのポイントとしては以下がある。

  ・目線を合わせる

  ・聞き取りやすい声量やスピードを心がける

  ②身だしなみ

   清潔感はもちろんのこと身体介護を実施することもあるため、機能面やご利用者様の安全面にも配慮すること。

  また、ご利用者様に怪我を負わせる危険のある、ペンやアクセサリーなどの扱いには十分注意する。

  身だしなみを整えるポイントとしては以下がある。

  ・髪型 :フケやべたつきがない。整髪料は控えめにする。ボサボサにならない、など

  ・顔  :髭は剃る。ナチュラルメイクにする。目やには取り除く、など

  ・服装 :シンプルで動きやすい服で華美なデザインは避ける。清潔な服を着る、など

  ・足元 :紐やヒールのない安全な靴を選ぶ。踵を踏まないようにする、など

  ・におい :香水はつけない。口臭や汗、タバコ、お酒のにおいに注意する、など

  ・アクセサリー :ネックレスや腕時計はつけない、など

  ・爪 :つけ爪、ネイルはしない。短く切りヤスリで整える、など

  ③表情・態度

   ご利用者様やご家族様は、ヘルパーの普段の表情や態度をよく見ている。良好な関係を築くには自然な笑顔と

  優しく余裕のある対応が必要となる。表情・態度のポイントとしては以下がある。

   ・表情 :にこやかな表情を意識する。ただし、辛い話は神妙な顔でなど使い分ける

   ・立ち方 :背筋を伸ばし、胸を張りまっすぐ立つ

   ・歩き方 :ダラダラとせず適度な歩幅で静かに歩く。早足にならない

   ・座り方 :正面を向いて膝の上に手を乗せる。膝を組むなどは控える

   ・物の扱い :机などに物を置くや、ご利用者様への受け渡しは丁寧に行う

   ・話の聴き方 :相手に正面を向け「私はあなたのお話を聴きます」と体全体で表す

  ④言葉づかい

   接遇において丁寧な言葉づかいは絶対条件で、赤ちゃん言葉で話すなどご利用者様の自尊心を傷つけるような

  ことはしない。親しみを込めつつも相手を尊重した柔らかな言葉づかいが大切になる。

  言葉づかいのポイントとしては以下がある。

   ・敬語を適切に使う

   ・否定口調を避け肯定口調で話す

   ・指示や命令口調を避け依頼口調を使う

   ・クッション言葉を使う :クッション言葉はやわらかく伝えるための枕詞で、例として、「恐れ入りますが」

                 「失礼とは存じますが」「せっかくですが」「残念ながら」などがある

   ・専門用語を使わない

   ・曖昧な表現は避け具体的に話す :「後で聞きますね」「もう少ししたら伺います」など漠然とした伝え方は避ける

   ・一気に話さず1つずつ伝える :例として「靴を履いたら、車いすに乗ってください」は、

                    「靴を履きましょうか(履くのを待つ)。はい、では車椅子に移りましょう」

  ⑤訪問予定時間の厳守

   時間厳守は社会人として当然に守るべきマナーであり、遅刻は利用者の重大な事故につながる可能性もあることから、

  必す訪問予定時間は守らなければならない。目安としては5分前訪問がベスト

  なお、渋滞などの交通事情や自転車の故障や前の訪問先が時間超過したなど、遅刻する可能性がある場合はできる限り

  早く事業所へ連絡し、事業所から次の訪問先へ連絡を入れるようにする

⑥節度ある行動

  訪問介護はあくまでサービス業で、ご利用者様は「お客様」になる。ヘルパーは、ご利用者様のご自宅に上がらせてもらう

  立場にあることを忘れず、以下に注意する。

  ・サービス中にトイレを借りる場合は許可をとる

  ・使った物品は元に戻す

  ・自分の話ばかりせず利用者の話しを傾聴する

  ・ヘルバーのプライベートを仕事に持ち込まない

  ・ヘルパーの考えを押し付けない。

  ・デリカシーのない無神経な発言をしない

  ・守秘義務を守りプライバシーに配慮する

  ・物をあげたりもらったりしない

   また、ご利用者様から嫌われるヘルパーの特徴として、「ヘルパーの考えを押し付ける」 以下のような行為がある。

   ・「こちらの方が絶対良いから」と、ご利用者様から頼まれた商品と違う商品を購入する

   ・「こっちの方が早いから」と、ご利用者様がこだわる仕方と異なる方法で掃除をする

   ヘルパーは自身の考えを押し付けるのではなく、「このような方法もあります」と提案する程度に留める。

  ⑦声かけの徹底

  介護現場では、利用者への声かけに始まり声かけで終わることが基本原則になる。身体介護や生活援助など、

  いかなる場面においても必ず声かけを行うこと。

  何かをする前に声かけを行うことで、ご利用者様は何をされるのかを理解でき、 安心してヘルパーを受け入れられる。

  なお、ご利用者様への声かけはご利用者様の心身の状態に合わせて、ご利用者様に伝わるよう声をかけることが

  重要となる。

  ⑧過剰サービスは控える

  介護保険法に基づく訪問介護の基本理念は自立支援で、単にご利用者様の要望に応えるだけの支援はご利用者様の

  できることを奪い主体性を損なわせる要因となる。

  ご利用者様の有する能力に応じ、「できることは自ら行ってもらう」あるいは 「ヘルパーと一緒に行いできることを

  増やす」よう促していくのがヘルパーに求められる専門性になる。また「今回だけ」といった特別待遇はいつの日か

  それが当たり前になってしまうので、ヘルパーは家政婦ではないと自覚し専門職として適度な距離感を保つ意識が

  必要となる。

   もし、複数のヘルパーのうち一人でも過剰サービスを提供してしまうと、サービスの整合性が取れなくなり、

  ヘルパー間の衝突を生んでしまうこともある。

  ⑨金銭の取り扱い

  訪問介護では、利用者の金銭を一時的に預かることがある。買い物代行などで金銭を取り扱う際には、

  「いくら預かったか」「いくら使用したのか」「お釣りはいくらか」をレシートとともに利用者と確認するなど

  十分な配慮が必要になる。

  また、ご利用者様の中には「お金を貸してほしい」「一時的に立て替えてほしい」などと訴えてくる方もいるが、

  こうした金銭の貸し借りは 後々のトラブルを誘引するので丁重に断るようにする。

  ◎接遇チェックリストの活用

  接遇マナーは一朝一夕に身につくものではない。このことから「接遇マナーチェックリスト」を活用し、

  ヘルパーは自身の接遇を振り返り、サービス提供責任者や管理者がこれを評価・フィードバックすることで、

  接遇マナーの定着を図ることが重要になる。

◆まとめ・研修結果

接遇マナーの内容と重要性を理解することができた。チェックリストを定期的に活用し、振り返りと評価・フィードバックを

通じて、接遇マナーをしっかりと身につけていきたい。