社内研修報告

令和7年6月 社内研修報告

●研修テーマ

うつ病の基礎知識と支援方法研修

●目的

うつ病の基礎知識と支援方法について学ぶ

●内容

◎うつ病とは

  抑うつ症群の1つで憂鬱な気分が続き、食欲、睡眠欲、性欲などの意欲がわかなかったり、何をやっても楽しめない

  といった心理症状が続くだけでなく、疲れやすいなどのさまざまな身体症状を伴うこともある精神疾患で、うつ病に

  なりやすい人の特徴は、真面目な人、完璧主義な人、責任感が強い人、道徳観や倫理観が強い人、人当たりがいい人

  などが挙げられる。

  脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまっている状態だと考えられている。

 ◎うつ病の有病率

  2003年に厚生労働省が公表した調査では、国内のうつ病12か月有病率(過去12か月間に診断基準を満たした人の割合)は

  2.2%、生涯有病率(調査時点までに診断基準を満たしたことがある人の割合)は6.5~7.5%だと発表されている。

  また、2013~2015年度までに関東地方、東日本、西日本で2,450人に行った調査では、うつ病の障害有病率は5.7%との

  結果もある。  

◎うつ病の治療や支援方法

  うつ病の治療には、落ち込んだ気分を和らげ、睡眠リズムを改善する効果を持つ抗うつ薬、不安感を和らげる抗不安薬

  などが使われる。また、心理療法も取り入れ、認知行動療法や対人関係療法、カウンセリングなどを通じた症状改善が

  行われている。

  何より大切なのはしっかりと休養を取ることで、うつ病は精神的または身体的な強いストレスが原因となるため、

  そのような強いストレスから離れた環境で過ごすことが重要になる。

  職場に強いストレスがある場合は一時的に別の場所に住むなどの対処をして、心身の休養がしっかりとれるようにする。

◎認知再構成法

  ①認知再構築法の基礎知識

  認知再構築法とは、精神的に動揺した時に現れる自動思考に注目し、適応的でない認知的な行動を適応的な行動に

  修正させる方法のことで、わかりやすい表現に変えると、ある出来事が発生した際に瞬間的に浮かんでくる思考

  (自動思考)を、適切なものに修正していく方法といえる。認知再構築法は、主にうつ病の治療に用いられるが、

  うつ病に限らず不安な気持ちを軽減させる目的で用いられることもある。

  しかし、認知再構築法を行うには、ある程度の思考や信念などが備わっていることが必要となるため、未成熟な子どもに

  対して行うことは難しい場合があり、精神的な落ち込みが激しい重篤な状態である場合も、冷静な思考を巡らすことが

  難しいため適用が難しいといわれている。

  ②自動思考とスキーマ

  上記①で「自動思考」という用語が出てきたが、心理療法では「スキーマ」という用語もあり意味は似ている部分が

  あるが区別して認識する。

  自動思考…何かの出来事が発生した際に自動的に頭の中に浮かんでくる考え方を意味する

  スキーマ…これまでの経験によって形作られた考え方や価値観を意味する

  自動思考が人それぞれ異なるのはスキーマがそれぞれ異なるからだと考えられていて、自動思考の奥深くにあり

  心の中核にある考え方がスキーマとなる。

  自動思考は、自覚の仕方を練習することで比較的容易に自覚することができるが、

  スキーマは奥深くにある価値観や人生観となるため、自覚することが難しいとされている。

  ③コラム法の実施方法

  私たちの気持ちや行動はその時に頭に浮かんだ自動思考の影響を受けている、この思考のバランスをとる方法に

  コラム法がある。

《 自動思考記録表(コラム表)記入方法 》

状況 ▶5W1Hなど 
気分(%) ▶現在の気分の割合(イライラ50%、悲しい30%など) 
自動思考 ▶その時に頭の中で思ったことや感じたこと 
4.根拠 ▶自動思考を裏づける客観的な事実を書く 
5.反証 ▶根拠とは反対に自動思考の矛盾となる事実を書く 
6.適応思考 ▶根拠と反証をつないでバランスの取れた考え方 (シナリオ)を作る 
7.今の気分(%) ▶2でまとめた気分がどのように変化したものかを書く 

【1.状況】

  辛い気持ちになった時の具体的な出来事を可能な限り具体的に書く。そのため5W1H(誰と、いつ、どこで、

  なにを、なぜ、どのように)を意識する。

【2.気分】

 「1.状況」で書いた状況に直面した時の気分を表現する。気分としては、憂鬱・不安・怒り・罪悪感などがあり、

  複数の気分が生じた場合は複数記入する。また、気分のレベルを、0%が全くない、100%が最大となるように

  数値化する。

【3.自動思考】

  その時に頭の中で思ったことや感じたこと、パッと浮かんだ自動思考を思いつく限り書き出す。書き出した自動思考の

  中から最も強く感じたものに「〇」を付けたり、数値化するのも良い。

  ここまでの1.から3.のコラムで、自分の自動思考の癖や偏りなどの特徴を知ることができ、以下の4.から7.のコラムで

  適応思考に切り替える。

【4.根拠】

  自動思考を裏付ける客観的な事実を書き出す。「3.自動思考」で書いた被支援者の考えや想像から事実を見つけ出す

  作業となる。

【5.反証】

    「4.根拠」とは正反対のことで、自動思考に対して反証をする。

【6.適応思考】

    「4.根拠」と「5.反証」をつなげ、バランスの取れた考え方(シナリオ)を作り出す。

  1つのシナリオだけでなく複数考えてみること、また、その中で「最善のシナリオ」と

  「最悪のシナリオ」を考えてみると良い。

【7.今の気分】

    「2.気分」でまとめた気分が、どのように変化したか0~100%の数値で書く。また、「6.適応思考」で作り出した

  シナリオから、新たな気分が出てくればそれを追加する。

  この時に気分が改善していなくても、意味がなかったと捉える必要はない。考え方の癖を知るきっかけとなり、

  今後の対応策や行動プランにつながっていくので、様々な状況を利用したコラムを付けていくようにする。

《 7つのコラムの記入例 》

1.状況自分だけが挨拶をしても挨拶を返されなかった。  
2.気分(%)あせり(60%)、悲しい(70%)、不安(50%)  
3.自動思考自分が嫌われている(60%) 友達から仲間はずれにされている(70%)
4.根拠挨拶をしても返事がなかった。 いつも遊んでいるグループで、自分以外の人が遊んでいた。
5.反証自分以外の人も挨拶を返されてなかった。 他の友達も遊びに行ってなかった 挨拶をしたときに他の事に集中していた
6.適応思考挨拶を返していない友達の機嫌が悪かったのかも(50%) 集中していた事に気が逸れていた(40%)
7.今の気分あせり(35%)悲しい(40%)不安(30%)  

◆まとめ・研修結果

うつ病の基礎知識と支援方法について、理解することができた。

今後の支援に活用していきたい。